キャベツを用いた貝類の種苗生産

 当協会では、種苗生産中の貝類に与える餌料としてアラメやカジメなどの大型海藻を用いていました。
 しかし近年、三浦半島沿岸では磯焼けが進行し、思うように海藻が入手できなくなってきました。
 そこで、海藻に代わる餌料として、地元の特産物であるキャベツに着目し、稚貝に与えてみることにしました。

 第1回試験を始めたのは2015年12月。
 サザエ、アワビ、トコブシの稚貝の殻長・殻高・湿重量を測定し、100個ずつカゴに入れ、キャベツの葉と、配合飼料、カジメをそれぞれ与えて飼育しました。
 
 約5ヶ月間の試験飼育の結果、サザエでは、配合飼料を与えたグループとキャベツを与えたグループは、殻高・重量ともに同様の成長をしていました。
 アワビでは、キャベツ・配合ともに殻長は同様に大きくなりましたが、重量がキャベツでは配合ほど増えませんでした。
 トコブシは、キャベツを与えるグループのみを設け、殻長・重量ともに増加しましたが、アワビ(キャベツグループ)ほど成長しませんでした。

 死亡個数は、どのグループもそれほど差はありませんでした。
 第2回試験は、2017年11月から行いました。
 1回目に比べて小さな種苗を用い、どの時期からキャベツが食べられるようになるのかも併せて検討しました。 前回の考察を踏まえ、キャベツが有用そうなサザエは数を増やし、キャベツと配合飼料を200個、各2グループ設けました。
 約5ヵ月間の飼育の結果、サザエでは配合の1グループは成長が良かったものの、その他は同様の成長結果となりました。生残数はキャベツの方が多く、2,3日毎に水替えや掃除をしていたものの、配合飼料で水質が悪化したことが原因と考えられました。
 サザエの試験グループ。 キャベツを与えて2~3日で上の写真のようになる。
 トコブシは、配合飼料の方が重量の増加が大きく、殻長も伸びました。生残数も、大きな違いは見られませんでした。
 アワビでは、重量はキャベツも配合も大きな差はありませんでしたが、殻長はキャベツの方が大きくなりました。しかし、生残数は配合の方が多くなりました。

 トコブシ・アワビについては、配合飼料の方が成長が良かったので、生産時のキャベツ使用は臨時的になると考えられます。

 サザエについては、今回も良い成長を示し、観察していても旺盛にキャベツを摂餌している様子が見られたため、生産時の餌料として有用なのではないかと考えられます。

 実際の放流に用いる際には、栄養や、放流後の成長における貝類への影響も検討する必要があると思います。
 
     アワビ(左)とトコブシ(右) 殻の緑色の部分が、試験中に成長した部分。
(掲載日:2018.11.26)